研究ハイライト

発光波長が近接するオーロラの分光観測2019.7.3

光学スペクトログラフで観測したオーロラ分光データ、EISCAT レーダーで観測した電子密度データ、全天オーロライメージを組合わせた評価

干渉フィルター(半値幅数nm程度)を用いた酸素原子発光線777.4nmの分光観測における窒素分子発光バンド1PGの混入問題に関して、光学スペクトログラフで取得したオーロラ分光観測データを用いて定量的に評価しました。評価の結果、窒素分子発光バンド1PGの混入の影響は無視できるものではないことが判明し、干渉フィルターによる分光観測で酸素原子発光線777.4nmを観測する際には窒素分子発光バンド1PGの影響を適切に考慮する必要があることを指摘しました。

Oyama, S., T. T. Tsuda, K. Hosokawa, Y. Ogawa, Y. Miyoshi, S. Kurita, A. E. Kero, R. Fujii, Y. Tanaka, A. Mizuno, T. Kawabata, B. Gustavsson, and T. Leyser, Auroral molecular-emission effects on the atomic oxygen line at 777.4 nm, Earth Planets Space, 70, 166, doi:10.1186/s40623-018-0936-z, 2018.

カテゴリ:オーロラ


人工オーロラ実験に関する予備調査2019.7.2

太陽活動度と人工オーロラ実験の成功確率の比較

人工オーロラ実験の計画立案のために、EISCATダイナゾンデの長期データを解析して人工オーロラ実験の成功の可能性に関する調査を行いました。調査の結果、太陽活動極大期に実験成功の可能性が高まること、極小期には実験成功の可能性が極めて低いことが判明しました。また、太陽活動極小期に人工オーロラ実験の成功可能性を高める手段として、EISCAT電離圏加熱装置の送信可能な最低周波数を現行の4MHz から2.8MHzに拡張することが有効であることを指摘しました。

Tsuda, T. T., M. T. Rietveld, M. J. Kosch, S. Oyama, Y. Ogawa, K. Hosokawa, S. Nozawa, T. Kawabata, and A. Mizuno, Survey of conditions for artificial aurora experiments by the second electron gyro-harmonic at EISCAT Tromsø using dynasonde data, Earth Planets Space, 70, 94, doi:10.1186/s40623-018-0864-y, 2018.
Tsuda, T. T., M. T. Rietveld, M. J. Kosch, S. Oyama, K. Hosokawa, S. Nozawa, T. Kawabata, A. Mizuno, and Y. Ogawa, Survey of conditions for artificial aurora experiments at EISCAT Tromsø using dynasonde data, Earth Planets Space, 70, 40, doi:10.1186/s40623-018-0805-9, 2018.

カテゴリ:オーロラ


脈動オーロラの高さの統計研究2015.6.21

脈動オーロラの方がONの時とOFFの時との高度の違い。 それぞれON/OFFの時のみの電子密度データを重ね合わせて平均している。

脈動オーロラ発生時の電子密度の大きさと電子密度がピークとなる高度との関係。 電子密度のピーク高度が低いほど、電子密度の大きさが大きくなることが分かる。

2008年から2012年にかけてのEISCATレーダーと全天光学機器との同時観測データを用いて
脈動オーロラの統計研究を行いました。
その結果、(1)全般的に100km以下の高度でよく起こること、
(2)真夜中側に比べ、明け方の時間帯の脈動オーロラの方が低高度でよく起きること、
(3)地磁気活動が活発であると、低高度でよく起きること、
などを明らかにしました。

Hosokawa, K., and Y. Ogawa, Ionospheric variation during pulsating aurora, J. Geophys. Res. Space Physics, 120, 5943-5957, doi:10.1002/2015JA021401, 2015.

カテゴリ:オーロラ


33年間のEISCAT観測から超高層大気が寒冷化する様子を解明2014.9.26

EISCATレーダーデータから導出した33年間(1981-2013年)の高度180kmから480kmの電離圏温度の変動。暖色系ほど高い温度(単位はケルビン(K))であったことを示す。太陽活動の極大期である1989-1992年付近や2000-2013年付近には電離圏温度が約1500度まで上昇している様子が見て取れる。

高度320 kmの電離圏温度の長期トレンド。ΔTiは、電離圏温度から太陽活動の影響を除いたもの。1年間あたり1.4度の割合で温度の低下が起きている。

電離圏温度の長期トレンドの高度分布。横軸は気温トレンドで、右ほどトレンドが高い(温暖化の傾向にある)ことを表す。グラフの色は3つの太陽活動度指数の違いを表している。高度が400 km 以上では、電離圏温度が上昇(温暖化)していることが分かる。

地球温暖化により超高層大気は寒冷化することがモデル計算で予想されていましたが、これまでの観測データに基づく寒冷化の程度は、モデル計算の予測値と大きな違いが生じている状況でした。本研究ではEISCATレーダーデータの詳細な解析から、精度の高い温度の長期変動分布を導出した結果、極域の超高層大気は1年あたり約1.4度の温度低下が起きていることが分かりました。この結果は、超高層大気の寒冷化が最新のモデル計算結果とも整合的に生じていることを示しています。地表面に比べて10倍以上も大きな変化をする超高層大気の温度の長期変動を充分に調査していくことが、超高層を飛翔する多くの人工衛星軌道の正確な予測や、地球温暖化の進行を予測する上で重要であることを、この研究は示しています。

Ogawa, Y., T. Motoba, S. C. Buchert, I. Haggstrom and S. Nozawa,
Upper atmosphere cooling over the past 33 years,
Geophys. Res. Lett., 41, 5629-5635, doi:10.1002/2014GL060591, September 2014.

プレスリリース

- AGU Research Spotlight として紹介されました (Eos Trans. AGU, 95(47), 444, 2014)

カテゴリ:長期変動


静穏時における電離圏トラフの季節変化と太陽活動度依存性2014.9.26

トラフの発生頻度を磁気地方時-磁気緯度分布に示した結果。夏季でもpost-midnightでは発生頻度が高い。

(a)トラフの発生頻度とイオン速度、(b)トラフ内部のイオン温度の増加量(摩擦加熱量)

・過去30年分(1982-2011年)のEISCATレーダーデータを統計的に解析して、静穏時の電離圏トラフ(電離圏の電子密度減少領域)の季節変化と太陽活動度依存性を明らかにした。
・季節変化の解析により、日照域におけるトラフ構造の維持には、摩擦加熱が重要であることが示唆された。この理由は、摩擦加熱に伴って解離再結合反応(電子密度が減少する化学反応)が促進されるためである。
・太陽活動度依存性の解析により、沿磁力線電流がトラフの発生頻度に影響を与えることが示唆された。特に太陽活動度が高いとき程、その影響が強く表れることを明らかにした。

Ishida, T., Y. Ogawa, A. Kadokura, Y. Hiraki, and I. Häggström (2014), Seasonal variation and solar activity dependence of the quiet-time ionospheric trough, J. Geophys. Res., 119, doi:10.1002/2014JA019996.

カテゴリ:トラフ


オーロラサブストーム開始前後の電離圏変動2014.6.23

統計解析で求められた(a) 電子密度、(b) 電子温度、(c) イオン温度の高度プロファイル。EISCAT上空をオーロラアークが通過する時刻を t = 0 とし、相対時刻を色で分類して表示している(黒:-60 < dt < -30 min, 青:-30 < dt < 0 min、赤:0 < dt < +30 min、緑:+30 < dt < +60 min)。下記説明文にある特徴をはっきりと確認することができる。

オーロラサブストームに対する極域電離圏の応答は様々な観点から研究されてきた。これまでの研究活動によって、例えば、極方向に急激に移動するオーロラアーク近傍に発達する電流系、高エネルギー電子の降込みによる電離圏密度の増加、ジュール加熱によるイオン温度の増加などの理解が進んだ。しかしこれらの現象の高度依存性は分かっていない。そこでEISCAT UHFレーダーを用いた統計解析を行い、電子密度、イオン温度、電子温度の変動の高度依存性を調べた。オーロラサブストームに伴い極方向に移動するアークがEISCATレーダー上空を通過する直前にイオン温度が電離圏全高度域において上昇する。これはペダーセン電流によるジュール加熱の発達を意味する。アーク通過後、ディフューズオーロラが発達し、E領域電子密度はこの時間帯に最大となり、高度150-200 km付近の電子密度は徐々に減少していく。一方、F領域の電子密度は高いレベルを長時間維持する。ポーラーパッチの影響も一部にみられるが、100eVクラスの粒子降込みが主な原因であることが分かった。

Oyama, S., Y. Miyoshi, K. Shiokawa, J. Kurihara, T. T. Tsuda, and B. J. Watkins, Height-dependent ionospheric variations in the vicinity of nightside poleward expanding aurora after substorm onset, J. Geophys. Res. Space Physics, 119, doi:10.1002/2013JA019704, May 5, 2014.

カテゴリ:オーロラ,磁気圏電離圏結合,電流


光学観測データを用いた電離圏電気伝導度の推定手法の開発2014.6.23

EISCATレーダーの観測値から電気伝導度を導出し、F領域(パネルa)、上部E領域(パネルb)、下部E領域(パネルc)に分類する。それぞれを縦軸に取り、フォトメータで測定したオーロラ光強度を横軸に取った分布図を示す。オーロラ光は波長によって発光高度が異なるので、各高度領域の代表波長として、F領域には 630.0 nm(パネルa)、上部E領域には557.7 nm(パネルb)、下部E領域には427.8nm(パネルc)の測定値を用いた。灰色の直線と曲線は本研究で求められた関係式であり、観測結果をよく代表していることが分かる。

EISCATレーダートロムソ観測所にあるフォトメータは代表的なオーロラ波長である427.8 nm, 557.7 nm, 630.0 nmの光強度を測定している。オーロラを発生させる高エネルギー電子は熱圏粒子を励起・発光させるだけでなく同時に電離も引き起こすため、オーロラの発生と共に電離圏電子密度が増加し、その結果、電離圏電気伝導度も増加する。電気伝導度は磁気圏-電離圏-熱圏結合を電磁気学的に理解する上で非常に重要な物理量であり、高度によってその特徴が異なる。オーロラ光強度と電気伝導度に相関があることは古くから知られており、光学観測データのみから推定する手法開発研究の結果、高度積分した全電気伝導度とオーロラ光強度との関係が定式化された。しかし高度に依存した関係式は求められていない。そこで、オーロラ波長によって発光する高度が異なるという特徴を活かし、さらにEISCATレーダーとフォトメータが同じ方向(磁力線方向)を同時に測定しているイベントを解析することで、高度に依存した関係式を求めることに成功した。

Oyama, S., T. Watanabe, R. Fujii, S. Nozawa, and T. T. Tsuda, Estimation of the layered ionospheric conductance using data from a multi-wavelength photometer at the European Incoherent Scatter (EISCAT) radar site, Antarctic Record, 57(3), 339-356, December, 2013.

カテゴリ:オーロラ,電流


オーロラサブストームと極域電離圏イオン上昇流の関係2014.6.21

2001年9月25日に発生したオーロラサブストームの画像

EISCATレーダーで観測された上向きイオンフラックス(上)とイオン上昇速度(下)

概要:

・複数のEISCATレーダーデータとIMAGE衛星のオーロラ画像データを組み合わせて、オーロラサブストームと極域電離圏イオン上昇流の関係を明らかにした。

・サブストームオンセットから約6分後に電離圏イオン上昇流が発生し、ポールワードエクスパンジョン時に上向き速度とフラックスが最大になることが明らかになった。

・この電離圏イオン上昇流に関連して、磁気圏では約40分後に高速酸素原子が観測された。この時間差から電離圏でのイオン加熱・加速は18-27電子ボルトと見積もられた。

・サブストームのリカバリーフェーズでも、広範囲に低エネルギー粒子の降り込みがあり、イオン上昇流が頻繁に起きていることを明らかにした。

Ogawa, Y., M. Sawatsubashi, S. C. Buchert, K. Hosokawa, S. Taguchi, S. Nozawa, S. Oyama, T. T. Tsuda, and R. Fujii,
Relationship between auroral substorm and ion upflow in the nightside polar ionosphere,
J. Geophys. Res. Space Physics, 118, doi:10.1002/2013JA018965, 2013.

カテゴリ:オーロラ,磁気圏電離圏結合


電離圏と中層大気との繋がり2014.4.28

突然昇温(1月24日)前後の電離圏イオン温度変動。成層圏よりも数日前に温度変化が生じています。

電離圏・熱圏は下層大気からの影響も顕著に受けています。その一例として、極域成層圏で突然昇温が発生したときの電離圏温度の変動の様子を、EISCATレーダーを用いて明らかにしました。

Kurihara, J., Y. Ogawa, S. Oyama, S. Nozawa, M. Tsutsumi, C. M. Hall, Y. Tomikawa, and R. Fujii, Links between a stratospheric sudden warming and thermal structures and dynamics in the high-latitude mesosphere, lower thermosphere, and ionosphere, Geophys. Res. Lett., vol. 37, L13806, doi:10.1029/2010GL043643, 2010.

カテゴリ:大気


中間圏を流れる電流2014.4.28

EISCATレーダーで観測された電子密度と電気伝導度の高度分布

脈動オーロラを引き起こすような高いエネルギーを持つ粒子の降り込みに伴って、電場方向に流れる電流(σp E)が2層形成されることを初めて明らかにしました。

Hosokawa, K. and Y. Ogawa, Pedersen current carried by electrons in auroral D-region, Geophys. Res. Lett., vol. 37, L18103, doi:10.1029/2010GL044746, 2010.

カテゴリ:電流


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